「今日の“kadode”な人:井龍さん(「りんごのほっぺ科学あそび教室」)」
今日は、「谷保のネオおばあちゃん家」にて取材。そこは目の前には畑が広がり、南側には南武線が伸びている、とてものどかな、元畳屋さんが営むホッとなスペース。入るとすぐ奥に畳が寝そべり、手前にほどよい分量の駄菓子が広げられている。子ども達には、「美味しい」場所であるのには間違いない。今回地域に開かれたこの畳の上をお借りして、お話を聞かせていただいたのは、最近子ども向けの「科学あそび教室」を始められた井龍あい子さん。

井龍さんは取材を受けるのは初めてとおっしゃり、やや緊張気味の面持ちで取材は始まりました。まずは、大きな卓袱台の上に置かれた「実験道具」と思われる物たちの存在がとても気になります。
「着ぶん①:Colorful」

「科学」→「実験」→「冷たくて固そうな道具」というイメージってないですか? しかし、そこに置いてあるのは、一見、色とりどりの「おもちゃ」のようにもみえる道具たち。これらがどうすれば、「科学」になるのか。例えば、「バスボム」は、重曹とクエン酸を混ぜて作るそうです。こ の「バスボム」に、可愛い「あひるちゃん」達を入れてみます。できたものを、お家のお風呂に 入れるとシュワシュワシュワと、白い塊の中からそれが登場するわけですね。それは、作ってからお家に帰っても、子ども達にとって楽しいし楽しみな体験になるわけです。科学の仕組みを理 解する、という前に、楽しい経験をまずしてみる、というこの教室の大前提がここにあります。彼女自身、高校生の時には、仕組みをあえて「教えない」化学の先生の元で、大きな影響を受けたそうです。なんと毎回の授業が実験で、考察やレポートまで全て生徒自身の力で行なわなければならなかった。大変ではあったそうですが、それがきっかけで彼女は科学や実験の面白さを見出していきました。さらに、そんなご自身の経験から井龍さんは子どもたちの自ら学び取っていく可能性を強く信じているのだろう、と筆者は感じたのでした。
「着ぶん②:Food」

井龍さんは、次にカラフルなトートバッグを卓上に広げました。「さて、これは何でしょう か。」それは、バッグ上に押された「スタンプ」の元となった野菜についてだそうで、それぞれ種類が 違うらしいです。「これは、〇〇ですか?」「 いや△△ですか?」「いや、違いますね~」「うー ん、分かりません!」「正解は、ねぎです!」、こんな掛け合いをしている中、筆者は気付きま した。彼女は、人を驚かせたり、楽しませるのが本当に好きな方なんだなと。「科学の先 生」というよりは、「科学のエンターテイナー」に近いのかもしれません。また、過去の小学校 教諭時代のお話を聞くと、単元の学習のまとめとして「食べられる」実験を実施されるなど、見た目だけでなく食欲、そして五感をそそるような科学実験を多く実践されてきたそうです。そんなところから、「科学は身近なくらしの中にあるということを知って欲しい」 という気持ちをとても感じます。
「着ぶん③:At home」

最後に、科学の話から家族のコミュニケーションについてまで話が及びました。彼女は2児の母でもあります。現在の科学あそび教室やライフスタイルのあり方も、子ども達とどう向き合っていくかを考える中で生まれたものであるようです。「ここでやったことを、お家で家族に話してもらえるような内容にしていきたい」と。子どもたちが、家に帰って家族にやったことを話したくなるなんて素敵ですよね。彼女が提供する科学あそびは、身近なもので、おうちでもできて、楽しいもの。それはきっと子どもたちにとって親に自慢して見せたくなるものでしょう。大人から子どもへ、子どもからまた大人へ、双方向のコミュニケーションが生まれていくのが、この科学あそび教室なんです。
「“kadode” is coming!!」

子育てと向き合うために小学校教諭を退職されてから試行錯誤の末、「くらしを楽しみたい」「くらしの科学的な楽しみ方を伝えたい」という思いから、思い 切って飛び込まれたという「谷保のネオおばあちゃん家」の後押しもあり、今年6月からついに「りんごのほっぺ科学あそび教室」をスタートされました。「(1回の)教室の中でいかに 楽しんでもらえるか」を考えるのは、「なかななか難しい」とおっしゃっていましたが、何せ井龍さんは「科学のエンターテイ ナー」ですから、素敵な教室になっていくことは間違いないでしょう♪月2回、水曜日の午後に開催されているようです、ぜひチェックしてみてくださいね!


☆詳しい情報は以下で♪
「りんごのほっぺ科学あそび教室」
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「谷保のネオおばあちゃん家」instagram→https://www.instagram.com/yaho.neo/?hl=ja
<取材・文>
高野宏(hirochi186)。広島県出身、東京都国立市在住・在勤。1989年8月6日生まれ。「街kadode」の発起人。ソーシャルワークとアートディレクションを軸に活動中。
<撮影> 竹田あや子
<取材サポート> たけちゃん